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2023.04.05
メンタル不調の予防と対策『カウンセリングでの取り組みについて』
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メンタル不調の予防と対策『カウンセリングでの取り組み』をご紹介
現代社会において、私たちの生活は種々のストレスと切り離して考えることはできないと言われています。ストレスが適切に解消されずに長期化すると、うつ病などのこころの問題や生活習慣病やがんなどのからだの問題に悪影響を与えることが知られています。
ストレスは早い段階で対処することも大切
一方でストレスは早い段階で対処できればその影響は小さなもので治まり、予防することも可能です。実際、多くの企業等では、この視点に基づいてストレスによるメンタル不調を予防(1次予防)し、不調があってもそれを早期発見して改善を図る(2次予防)ことを重視したメンタルヘルス対策が行われています。
そして、カウンセリングにおいても早い段階で問題に対処することは非常に重要となります。今回は早い段階で医療機関とカウンセリングに来談したことで、メンタル不調の悪化を未然に防いで改善させ、その後もメンタル不調を予防することができるようになったAさんを例として、ケースをご紹介します。
メンタルの不調のきかっけ。対策法にはどんなものがある?
プレッシャーや疲労が高まりやすい時
Aさんはとある学習塾の男性講師です。子どもに教えることが好きなAさんは、今年で3年間、塾講師として仕事に熱意を持って携わっており、子どもたちにも大変人気がありました。また、子どもの勉強への苦手意識を低減させることでも保護者に信頼されていました。このためAさんが担当する生徒の数は経験を重ねるごとに多くなり、この中には他の講師では対応が難しい生徒も含まれていました。こうした状況に対応するために、Aさんは毎日遅くまで残業して生徒一人ひとりに合わせた授業資料を作ったり、休日を削って先輩講師に指導を受けるなどしていました。
不眠から集中力の低下やケアレスミスへの悪循環
このような状況が続いたある日、いつもは短くてもしっかり睡眠が取れていたAさんが、急に朝まで眠れない経験をしました。昼間に強い眠気に襲われるのですが、夕方を過ぎると眠気は消えていたため、Aさんは普段通りに残業して遅くに帰宅しました。しかし、この日もAさんはなかなか眠ることができませんでした。さらに翌日の授業では睡眠不足からAさん自身がケアレスミスを繰り返したり、資料作成作業に集中ができず普段以上に時間がかかってしまいました。このために、この日以降も帰宅時間がさらに遅くなって余計に睡眠時間がとれないという悪循環にAさんは陥ってしまいました。
経験者のBさんの存在
これまでのAさんは塾の中で他の講師と雑談にも興じていたのですが、最近では笑顔が少なくなり一人で座ってボーッとしていることも多くなりました。こうしたAさんの様子を見て、塾のベテラン講師であるBさんが心配して声をかけてくれました。Aさんは、塾のベテラン講師であるBさんに自身の状況を話してみることにしました。すると、Bさんは真剣に話を聞いてくれ、すぐに病院で相談した方が良いと言いました。Bさんも過去にAさんと同じような状況に陥った経験があり、特段の対処もせず一人で抱え込んでしまったために、うつ病を発症して長期の休職を余儀なくされたことがあったのです。
同じ苦しい思いをAさんにはして欲しくないと相談にのってくれました。
不調への対策。カウンセリングの取り組みのきかっけとは
Bさんの話を聞いて、Aさんはすぐに近くの心療内科を受診しました。医師からはストレスから不眠が生じているという説明を受けました。幸いにも不調が初期で軽度であったため、一番の問題であった不眠はお薬ですぐに改善されました。また、Aさんは医師から問題の再発を予防するために、今回のストレスの原因や自分自身の傾向についてカウンセリングで話してみてはどうかと言われました。Aさんもこれを希望したことでカウンセリングを実施することとなりました。
カウンセリングでの取り組みについて
まず、カウンセラーは今回のAさんの苦労について労いながら、Aさんの仕事に対する気持ちを共感的に聞いていきました。
「仕事自体は楽しくやりがいを感じているため、これからも続けていきたい」
「少し前からなかなか成績が上がらない生徒を多く担当するようになった」
「生徒のペースもあるが、結果がなかなか成績に現われてこないと塾の講師としては焦りを感じる」
「難しい生徒を任せてもらえるからには信頼に応えないといけない」
「以前は釣りが趣味だったが、ここ2年ほどは仕事を優先して釣りにも行っていない」
とAさんは話してくれました。カウンセラーはAさんが多くの難しい仕事を一人で抱える傾向があり、このことによるストレスが今回の不眠というメンタル不調に影響したと考えました。
対話を通して、一人で抱え込んでしまう傾向について着目できた
Aさんとこのことを検討すると、「担当を断ったり結果が出せないと、やりたい仕事をやらせてもらえなくなるのではないかと不安だった」「こうしたことを寝る前に考えると、緊張して眠れなくなった」と仕事への不安が睡眠に影響していたことにAさんは気づくことができました。
カウンセラーはこのことを踏まえて、再発を予防するためにどのようなことができるかをAさんと一緒に考えました。まず、Aさんは塾の管理者に事情を説明して、しばらくの間新しい生徒の担当を控えることとしました。これには塾のベテラン講師であるBさんも一緒に管理者に説明してくれたおかげで理解もすぐに得られました。
抱え込んでしまっている仕事について職場と相談するきかっけに
また、可能な生徒については他の講師に担当を変えるなどの対応も塾として取られました。塾の管理者からは「Aさんには長くこの塾で講師をして欲しいから、今回、正直に辛いことを相談してくれて良かった」と言われたとのことです。この言葉を聞いてAさんは「正直に気持ちを伝えてもちゃんと仕事をさせてもらえることがわかり安心した」「周りに相談しながらこの仕事を長く続けていこうと思った」ということです。
自らのストレスの対処方法も検討してみる
Aさん自身も
「普段から自分の体調や気分に注意を払う」
「普段と変わったことがあれば早めに休息をとったり受診して改善するようにする」
「仕事以外の自分らしさを感じる活動(Aさんにとっては釣り)も行う」
といったストレス対策を行うこととしました。
カウンセリングでリラクゼーション法などの検討もできた
カウンセラーからは、前述のAさんの取組みに加えて、こころやからだの状態への気づきを促すマインドフルネスやストレス対処のためのリラクセーション法習得のお手伝いをすることでAさんのストレス対処のスキルを高める働きかけを行いました。
カウンセリングの目指すところ。自らをモニタリングできるようになることへ
その後、フォローアップの中でAさんはストレスと上手に付き合いながら、楽しく仕事を続けていることを報告してくれました。「早い段階で自分のストレスの受け止め方を知って対処できるようになれて良かった」「今後は何かあっても早めに相談にくれば大丈夫という安心感がある」と当初の問題が解決されたことを確認できたため継続のカウンセリングを終結することとなりました。
さいごに
Aさんというモデルケースのように、カウンセリングにおいても、問題の早い段階で介入を行うことで、来談者の心理的・身体的・経済的等の負担を最小限にとどめながら、スムーズに問題解決を進めることが可能となります。また、再発予防の効果も高まることが期待できます。ストレスによるメンタル不調を少しでも早く予防・改善することで、自分らしく仕事や家庭生活を送っていただけるようにカウンセリングがお役に立てれば幸いです。
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監修者
カウンセリングルームここまり医師
医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。
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