家庭 友人関係 心理
2023.04.05
ペットロス『心理的背景とカウンセリングでの取り組みとは』
ペットロスについて
親しくしていた人と別れたり、大切な誰かを亡くすといった体験は誰にとっても辛いものです。その人への親しみや愛情が深ければ深いほど、失ったことへの悲しみや後悔の念が強くなるのは当然でしょう。
「家族」であり「パートナー」でもある
そして、このことは大切なペットとの別れや死についても同じことが言えます。「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」という言葉が示唆するように、飼い主にとって、何年も一緒に同じ時間を生きてきたペットは「家族」であり「パートナー」とも呼べる存在です。
悲しみが強く、対処しきれないため、カウンセリング相談されることも多い
こうした大切なペットとの別れや死についての体験はペットロスと呼ばれ、飼い主の誰もがいつか経験する辛く悲しい出来事です。しかし、場合によっては、こうした悲しみが大きくなり、うつ病や心臓病など心や身体の病気に繋がってしまうこともあります。こうした症状はペットロス症候群と呼ばれることがあります。このようにペットロスによる悲しみが強く一人で対処することが難しい場合、カウンセリングへ相談に来られる方も多くおられます。
ペットロスの心理的背景とは
ペットロスに際して経験する心理的な苦悩は悲しみや落ち込みを中心として、不安、罪悪感、苛立ちなど様々です。
悲しみと落ち込みだけではない、揺れ動く感情
実際、カウンセリングの中で
「ペットの死が未だに信じられない」
「ペットの世話することが生きがいだったのに、これから何を生きがいにすれば良いかわからない」
「もっとペットのためにしてあげられたことがあったのではないか」
「他の家族がもっとペットのことを気にかけてくれていたら、ペットを失わずにすんだのに」
など様々な声が聞かれます。
周囲に適切な理解者や、語る相手がなかなか見つからないことも
また、
「家族や友人などにペットロスのことを話しても、“そんなことくらいで...”と自分の気持ちを理解してもらえない」
「適当なアドヴァイスだけで真剣に話を聞いてもらえない」
などペットロスに関する苦悩を誰にも話せずに一人で抱え込んでいたというケースもカウンセリングでは頻繁に遭遇します。こうした適切な理解者や語る相手がいないという経験が、ペットロスの苦しみを増悪させているように思えてなりません。
ペットロスのカウンセリング・プロセスとは
カウンセリングでは、カウンセラーが相談に来られた方(以降、来談者)一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、こうした声を丁寧に批判することなく聞くことから始まります。
来談者のペースで少しづつ語れることを目指す大切さとは
こうした安心感の中で、来談者が自分のペースでペットロスの体験についてカウンセラーに語ることによって、少しずつ大切なペットを失った気持ちの整理が進むようになります。もちろん、「ペットロスの体験を語ることはペットのことを思い出して辛くなる」という声もあります。これは自然なことですが、一方で安心できる誰かに自分の辛く苦しい気持ちを語ることで、ペットロスに際しての辛い気持ちが次第に癒やされるという側面もあると言われています。
辛い別れを忘れようとするのではなく、語ることで経ていくプロセスがある
このように安心感の中でカウンセラーとペットロスの体験を語るうちに、少しずつペットを失ったこと以外のペットとの思い出や気持ちについても落ち着いて語ることができるようになっていきます。「ペットとよく一緒に遊んで楽しかったな」「ペットが小さい頃は全然言うことを聞かなくて躾が大変だったな」「ペットが病気になったとき、家族総出で看病したな」といったペットとの楽しい時間、ペットとともに生きる上で苦労したこと、ペットのためにしてあげられたことなど様々なペットとの思い出をカウンセリングの中で聞くことができます。
来談者それぞれのペースと心理プロセスがある
このようにカウンセリングにおいては、カウンセラーとの語らいを通じて、ペットと生きた大切な時間を総合的に振り返ることができるようになるにつれて、ペットロスの苦悩が癒やされ、気持ちと考えを整理しながら、少しずつ新しい現実を生きることができるようになるというプロセスがあります。このプロセスは来談者のペースに沿って進むことが重要であると考えます。このことによって、ペットと生きた時間や思い出を大切にしながら、ペットとの別れが少しずつ受け入れられるようになっていきます。
来談者のペースに沿って、苦悩が癒され、新しい現実を見据えていけるよう
「ペットロスの最初の頃はペットを失ったというそのことばかりに囚われていた。ペットとのことを少しずつ話すようになって、その楽しい思い出など一緒に生きてきた時間を振り返ることができるようになっていった。それから少しずつペットの死を受け入れて、ペット以外の自分や家族のことも考えられるようになった。」「ペットのことを忘れたわけではない。今でもふと寂しい気持ちになることもある。だけど、一緒に楽しい時間を生きてくれたことに感謝もしている。こうした大切な思い出もあるから、ペットのことをこれからも忘れずに生きていく。」
さいごに
ペットロスは飼い主にとって大変に辛い体験です。ペットとの大切な思い出と飼い主の人生の多くの素晴らしい側面がこうした辛さに埋もれてしまわないように、カウンセリングが何らかの助けになれば幸いです。
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監修者
カウンセリングルームここまり医師
医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。
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