怒りについて『感情のコントロール、アンガーマネジメントとは』

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2023.04.08

怒りについて『感情のコントロール、アンガーマネジメントとは』

怒りとは『感情の暴走・疲れやすさ・上手くいかない』といった悩みも

カウンセリングの中で、よく「感情のコントロールをとれるようにしたい!」という相談をうけることがあります。そうした場合、とりわけ「怒り」の感情について語られることが多いという印象を受けます。

怒りにまかせて振る舞うために人間関係が上手くいかない、物や人にあたってしまう、あるいは怒りを抑えることで疲れてしまう・・・こうした悩みは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。

怒りの暴走

実は、こうした怒りをどのように抑えるのかということについては、大昔から議論されていました。

ギリシアの哲学者のセネカは『怒りについて』という著作の中で、一切の怒りを退けるものであるとして取り上げ、そのためにさまざまな方法を提案しています。この本は、現代のわれわれが読んでも学ばされることが多いです。

いつの時代も、注目されている感情

例えば「怒りに対する最良の対処法は遅延である」というセネカの言葉は、このあと取り上げるように心理学的な裏付けある対処法として広く知られているものと共通しています。

ちなみにセネカは暴君として知られる皇帝であったネロの家庭教師でした。セネカが政策的ブレーンであったころのネロの治世は安定していたものでしたが、セネカが追放されて以降乱れていきました。そして、最終的にネロによってセネカは自殺を命じられることになります。暴走した怒りの末路は、このように時として悲惨なものになってしまいます。

怒りのコントロール方法とは

アンガーマネジメントの歴史とは

行き過ぎた怒りを表出してしまう人に対して、「怒りの感情をコントロールする」ことを目的行うカウンセリングでは「アンガーマネジメント」という、認知行動療法に基づいた精神療法があります。アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで開発されたもので、怒りが出てしまう時の手がかりを特定と、その際のスキルを身に着けることを目的に実施されます。

自分の怒りの特徴を知ることも大切

自分がどのような場面で怒りが出てしまうかわかると、それに向けて準備をしたり、あるいはそうした場面をなるべく避けて生活ができるようになるかもしれません。怒りを感じた場面を記録するだけで、自分の姿を冷静に見ることができるようになっていきます。

短時間やり過ごすスキルも

また怒りに対処するためのスキルの例として、アンガーマネジメントではセネカと同じく短時間やり過ごすことを勧めます。

これは「6秒ルール」として知られており、メディアなどでも紹介されています。他にも、マインドフルネスと呼ばれる自分自身の気づきを増す方法も取り入れながら、行き過ぎた怒りが発生する回数を徐々に減らしてきます。

目的が怒りの抑圧ではないという点には注意

ところで、このアンガーマネジメントは「感情労働」という、自分自身の感情をコントロールすることが求められる職種のストレスに対する方法として発展してきたという歴史があります。さらには1995年にダニエル・ゴールドマンの影響ある著作である『EQ:こころの知能指数』が出版されました。

怒りそのものを消し去るということではない

現代社会では、ますます自身の感情、とりわけ怒りをコントロールすることが求められるようになっていると言えます。しかし、「怒りをコントロールする」ということは、「怒りを感じないようにする」ということではありません

たしかに「行き過ぎた怒り」に対してはアンガーマネジメントは有効ですが、アンガーマネジメントの目的は怒りが深刻な問題にならないように上手く制御することであり、怒りそのものを消し去るものではありません

行き過ぎず、足りすぎない『怒り』が適切である

先にあげたセネカに反して、怒りの機能の重要性を説明したのはアリストテレスでした。アリストテレスにとって重要なのは、ものごとがほどよいこと(中庸)であるということでした。アリストテレスにとっては、行き過ぎた怒りと同じく、不足した怒りも問題とされたのです。現代の心理学においても、概ねこうした見方が支持されるようになっています。従来はネガティブな見方をされてきた概念の適応的な部分を評価する心理学の運動をポジティブ心理学と総称しますが、そうした流れの中で怒りのポジティブな部分もまた、評価されるようになっています。

怒りの建設的な表出へ『カウンセリングとは』

怒りのポジティブな部分として古典的に強調されてきたのは、それは自身が不正な取り扱いをされていることに対する警告になる、ということです。

自らが不当な扱いをされているとき、人は怒りを感じます。それを表出しなかったり、押さえつけてしまうことは、そうした不当な扱いを固定化したり、あるいは抑圧という心理プロセスを通じてさまざまな心身の不調の原因となってしまいます。

『アサーション・トレーニング』怒りの建設的な表出は大切である

そうした表出されない・抑えつけられている怒りを安全・安心な場面で語り合うことによって、結果的に症状を緩和させることを目的としても、カウンセリングは実施されます。他にも、怒りを表出することは必ずしも関係を悪化させるものではなく、相互理解を促し人間関係を強化する効果もあるとされています。こうした場合、必要になるのは正しい怒りの表出方法、ということになります。

こうした適切な表出方法を「アサーション」と呼び、そのやり方を学ぶカウンセリングを「アサーション・トレーニング」と呼ばれ、広く実施されています。

さいごに

怒りについて心理学的な側面から記載をさせていただきました。

怒りは時に、疲れますし、人間関係を大きく変化させます、また自分で抑え込むことも一苦労する感情であり、ネガティブな印象を持ちがちです。あくまでも、怒りを減らすのではなく、強すぎず・弱すぎずの程度の怒りをコントロールするだけではなく、その怒りの感情を上手く表出する場を考えることは、現代ではとても大切なように思います。

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監修者

カウンセリングルームここまり医師

カウンセリングルームここまりの精神科医師と公認心理師・臨床心理士による記事記載と投稿。

医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。

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