カウンセリングについて『お悩み相談との違い』『どんな人が受けていいの?』

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2023.03.31

カウンセリングについて『お悩み相談との違い』『どんな人が受けていいの?』

「カウンセリング」という言葉は他の分野にもたくさん

近年、『カウンセリング』という言葉は幅広い分野で使用されています。ドラッグストアなどで見かける『カウンセリング化粧品』や美容医療や歯科医院での『初回カウンセリング』、就職支援などで行われる『キャリアカウンセリング』・・・・などなどさまざまな分野で『カウンセリング』というものが取り入れられています。

今では学習塾などでも初期に指導計画を立てるために面談することを『カウンセリング』と呼ぶこともあるようです。実際にカウンセリングという言葉自体は決して珍しいものではなく、多くの人が日常的に見聞きすることがある言葉になってきていると言えます。

「カウンセリング」と聞くとどのようなイメージを持ちますか

では、多くの人は『カウンセリング』という言葉をどのように理解しているのでしょうか?「話を聞いてくれる」「悩みを相談して解決しくれる」「心を読まれる」「何か良いアドバイスや答えを教えてくれる」など多様なイメージをもっておられると思います。

心理士のカウンセリングとは何なのか?

「よく聞くけど、正しく意味を説明しろと言われるとよくわからない」という人は多いのではないかと思います。それは心理士であっても同様です。

理由としては、広くとらえた意味で説明しようとするとなかなか伝わりづらく、しかし具体的な説明にしようとしても、個人差がある取り組みであるため、その人にとってのカウンセリングの意味とはならないと思うからです。

実際の臨床場面でもカウンセリングを初めて受ける患者さんから「カウンセリングって何ですか?」「何すればいいんですか?」などと質問されることは多いです。ですが、毎回毎回説明に困る・・・・、というのが正直なところです。

カウンセリングについて調べてみると

言葉自体の意味としては、広辞苑によると「適応上の問題の解決のために来談した人=クライエントに対して訓練を受けた専門家=カウンセラーが指導、助言することである」と定義されています。適応上の問題・・・というとなんとなく小難しい感じがしますが、人間が悩むときは必ずと言っていいほど自分以外の何かが存在します。

悩みや解決を望んだ出発点をカウンセリングとすると分かりやすい

我々は学校、会社(職場)、家庭、地域・・・さまざまな環境やコミュニティに身を置き、誰かとかかわりあいながら生活をしています。自分が身を置いている環境やコミュニティ、そしてそこにいる人たちとのアンマッチが起こることでストレスを感じ悩みが生じます。それは誰もが人生において一度や二度は必ずと言っていいほど経験することで決して珍しいことではありません。

そう、誰しも悩むことがあり悩みを解決しようとしたり解決を望んでいたりする人がいる、そしてその解決を援助しようとする人がいるというところからカウンセリングはスタートするのです。河合隼雄も著書の中でカウンセリングの出発点について「一人の人間が悩みや問題をもっている。そして、その解決を望んでいるときに他の人間が援助する。このとき、悩みや問題をもってくる人がクライエントで、それ援助する人がカウンセラーである」としています。

カウンセリングの出発点は、身近な悩みや解決への相談から

特別な事情ばかりに注目するするのではありません

特に精神科病院やメンタルクリニックなどの医療機関や相談機関などでのカウンセリングとなると、どことなく自分とは関係ないもの、という印象を抱く方が多いのではないかと思うのですが、実際その内容をみてみると意外と身近なところが出発点になっているものなのです。そして、「特別な何か」をしているわけではなく、悩みや問題を解決したいと思っているクライエントたちに対してあらゆる角度や方向からアプローチし悩みや問題を共有し解決に向かうよう一生懸命援助しようとしているカウンセラーが存在する、という非常に素朴で地道な営みが行われているのです。

お悩み相談とカウンセリングの違いとは

では、巷にあふれる『お悩み相談』と医療機関での専門家による『カウンセリング』は何が違うのでしょうか?

お悩み相談は、「アドバイス」が中心

『お悩み相談』は決して専門機関でなくても親子、友だち同士、職場の上司や同僚・・・・などさまざまな人間関係の中で日常的に行われています。またテレビ番組の企画などでも『専門家によるお悩み解決コーナー』的なものはよく見られます。

「悩みや問題をもっている人がいて、その人は解決を望んでいる。そしてその解決を援助する人がいる」という時点で広義のカウンセリングは成立しています。

悩みに対する「アドバイス」は解決を目指した行動や助言ではあるが・・・

日常の中の人間関係であっても、テレビ番組などの企画であっても、悩みの相談を受けたときによくやりがちなことは「アドバイス」です。例えば、親との関係に悩んでいる人に対して「親とよく話をしてみなさい」と言ってみたり、友だち関係に悩んでいる人に対して「そんな友だちとは距離を取ったら」と言ってみたり・・・・。時には「あなたがちゃんとしないからダメなんだ」「ごちゃごちゃ言っていないでやってみたら」など叱責や説教のようになることもあります。また、口頭でのアドバイスにとどまらず、直接的に解決するために行動することもあります。例えばお金に困っている人にお金を貸してあげる、先輩との関係に悩んでいる場合は先輩に口利きをしてあげる・・・など。

しかし、他者のアドバイスや助言通りにいかないことは実は多い

これらの行為は相手のことを思っての善意から始まることが多いです。しかし、どれほどの効果があるのでしょうか・・・・。個人的な経験則ではありますが、こういったアドバイスや援助はほぼ効果がない、と言っても過言ではないように思います。

確かに一時的には悩んでいる人は「そうだな」と納得したり、解決してもらうことで問題がなくなったように感じたりするかもしれません。ですが、そのアドバイスの通りに実行されるということは非常に少ないです。また、問題を解決してもらった場合は自分で解決したわけではないためまた似たような問題に出会ったときに同じように悩むことになります。

「お悩み相談」というアドバイスを受け続けないと自分で対応できなくなってしまう

つまりは一瞬は問題が片付いたように思われても、実のところは何も変わっていない、解決していないということが多々あるのです。さらには直接的な援助を受け人に解決してもらうことを繰り返せば、誰かにやってもらうことが当然になり自分で解決する力は一向に身につかないということも予想されます。人の悩み相談を受ける場合には自分の言葉や態度が相手にどのように響き、どのような影響を与えるのかということを十分に考えたうえで対応する必要があるのです。

相談者の気づきを重視したのが『カウンセリング』

「聞く」は音や声などが自然と耳に入ってくること、「聴く」は「音楽を聴く」「講義を聴く」など積極的に耳を傾けて聴くことです。カウンセリングでは「聴く」ことに重点を置きます。その背景には悩みや問題を解決する主体はクライエントにある、という前提があります。先述のアドバイスや直接的な援助は必ずしも主体はクライエントにはありません。また、カウンセリングはクライエントの話を「良い」「悪い」「正しい」「間違っている」などの評価を入れずにただ一生懸命耳を傾けるところから始まります。

「カウンセリング」は相談者みずからの発見と選択をサポート

そうしていくうちにクライエントは自分自身の心の動きに気づき、解決のためにどうするべきかということを発見していきます。河合隼雄によればカウンセリングの狙いは「クライエントの心の底にある可能性に注目して、それによって本人が主体的な努力によって、自分の可能性を発展させてゆく、そのことによって問題も解決されてゆくという点にある」と述べています。カウンセリングで大切なことはクライエント自身が自分自身の問題に立ち向かい、自分自身の努力や主体性によって解決しようとすることであり、あくまでもセラピストはクライエントが主体的に考え動けるようになることを援助する、ということです。言い換えれば、セラピストができることは非常に少なく、できることと言えばもしかするとクライエントという一人の人間を理解しようと一生懸命その人の話を「聴く」ことくらいなのかもしれません。

どんな人がカウンセリングを受けるの?

「こんなことでカウンセリングに来て良いのですか?」と質問されることがときどきあります。精神科・心療内科を受診される患者さんの中には「私は病気というほどではないし・・・・」「こんなところに来るほど重症ではない」と思っている方は少なからずいらっしゃいます。受診のハードルが下がって一般的になったからこそ、自分は受診するほどの状態なのかということに迷いがある方もおられます。その迷い自体は当然の気持ちだと思います。ですが、そう迷っている人も大なり小なり何らかの理由をもって受診されています。客観的に見れば「大したことない」「些細なこと」と思われそうなことであっても本人にとっては重大な悩みである場合も多いのです。

カウンセリングでも同様です。「こういう人が受けなければいけない」「こういう人でないと受けてはいけない」という定義はありません。「病気ではない」「重症ではない」、でも「悩んでいる」「困っている」「何とかしたい(何とかして欲しい)問題を抱えている」方はその解決のための選択肢として『カウンセリング』というものを入れていただけると良いのではないかと思います。どんな人であっても何か悩みや問題を抱えていて、そのことを解決したいと望む場合、それがカウンセリングを受ける理由になるのです。

引用文献 河合隼雄 著 『カウンセリングの実際問題』

さいごに

カウンセリングに関する記載をいたしました。カウンセリングとは何なのか。そして、「お悩み相談」と「カウンセリング」にはどのような違いがあるのか、また、カウンセリングはどのようなことを目指し、どういった方に受けていただけるのか。カウンセリングについて少しでも身近に感じるきっかけになればと思っております。

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監修者

カウンセリングルームここまり医師

カウンセリングルームここまりの精神科医師と公認心理師・臨床心理士による記事記載と投稿。

医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。

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