親子関係『子供とどのように関わればいいの?』『自分の経験を、子どもに重ねて心配』カウンセリングで重要なことは?

家庭 子育て 学校

2023.04.01

親子関係『子供とどのように関わればいいの?』『自分の経験を、子どもに重ねて心配』カウンセリングで重要なことは?

「子どもとどのように関われば良いのか?」カウンセリング相談は増加

「子どもとどのように関わればよいか」という親からの相談はカウンセリングで扱われることが多いテーマの一つで、子どもが親とは異なる考えや価値観を持つことが顕著になったことをきっかけに来談される方が多くおられます。この背景には、子どもの成長に伴って親の役割が変化した影響があると考えられます。

例えば、子どもが幼い頃は、親が子どもの身の安全を間近で見守るなど特に積極的に子どもと関わることが必要な時期あります。一方で友人関係など子ども同士の交流が活発になったり、学校など社会的な活動に参加するようになると、親は少しずつ子どもの社会性や主体性を育むためにその関わりを減じることが必要となる時期もあります。特に思春期などは子どもが「私らしさ」の確立を目指しながら、一人の人間として社会と関わろうとし始める時期であり、これまでの親役割の大きな転換を求められる可能性もあります。

『自分の経験を、子供に重ねて心配してしまう親』エピソード例

ここではカウンセリングのイメージを付けていただきやすくエピソード例を記載してみました

「母(A)と娘(B)」の来談エピソード例

「子供とどう関わればいいのか?」Aさんという女性もまたこのような悩みをきっかけにカウンセリングに来談されました。AさんにはBさんという娘がいます。AさんはBさんを大事に思い、「Bに辛い思いをさせないように育ててきた」とお話されました。例えば、Bさんが怪我をしたりしないようにAさんが安全を確認できたおもちゃだけを買い与えたり、Bさんが将来困らないようにAさんが調べて良いと思った学校を受験させるなど「常にBのことを考えて生きてきた」とのことでした。

進路のことで母(A)と娘(B)の意見が対立するように

Bさんが高校で今後の進路を考える時期になったある日、Aさんは自分が指定した大学を受験するようにBさんに伝えたところ、Bさんは初めてAさんの指示を拒否しました。そして、BさんはAさんが考える進路とは異なる道にチャレンジしたいと話したのです。

このことにAさんはひどく動揺しました。Bさんが進む進路では「娘が不幸な人生を歩むことになる」と思えたということです。Aさんは不安や焦りからBさんを怒鳴りつけてしまい、考え直すように何度も説得しましたが、Bさんの意志は固く決して譲りません。

こうしたやりとりが続き、次第にBさんはAさんを避けるようになり家庭内でも二人がまともに話すことは難しい状況になりました。Aさんは失望感と今後への不安で夜も眠れなくなり、耐えかねてカウンセリングを開始することとなりました。

母(A)さんのカウンセリング来談時。「娘(B)の考えを変える方法をみつけたい」

カウンセリングではAさんは「このままではBが不幸になってしまう」「Bの考えを改めさせる方法を教えて欲しい」と訴えました。

『子への心配』の他に『関与するもの』とは

親と子どもの衝突に関するエピソード例を紹介しました。子どもが成長するに伴い、親との意見の相違というのは良くあることかもしれません。しかし、進路や学校などの大きなテーマの時には、「親と子」の衝突は明確になるきっかけでもあります。

来談者の母(A)さんとのカウンセリングについて

カウンセラーはまずこうした言葉の背景にあるAさんの不安やBさんの幸せを願う思いを共感的に聞いていきました。カウンセラーに話をする中で、Aさんは少しずつBさんを出産するまでの体験について語るようになりました。

母(A)としての苦労や想い

元々、子ども好きだったAさんは夫と結婚した早い段階から、自分たちの子どもを授かることを望んでいました。しかし、その後なかなか妊娠に至らず、ようやく妊娠した後で流産を経験することもあったそうです。こうした経験からAさん夫婦は子どもを諦めようとした時期がありました。そのような経緯を経て難産の末に誕生した待望の子どもがBさんだったということです。

娘(B)への重ね合わせとは

カウンセラーはAさんの話を聞いて、Aさんが大変な経験の中でBさんを出産したことで、Bさんのことを大切に思うがあまり、Bさんと自分を強く重ね合わせていると考えました。実際、「Bが泣いたり苦しんでいるのを見ると自分も同じくらい苦しく感じて耐えられなくなる」とAさんが話すことからもこのことがうかがえました。

親の辛い経験を癒していくことも大切

親の経験は子どもよりも大きなものです。しかし、その経験が、親自身を縛り付けてしまい、子供へも同一視してしまうことも少なくありません。

親子関係についてひも解いていくとき、親としてではなく、一人の相談者としてカウンセリングで向き合うことはとても大切なように思います。

母(A)さんとのカウンセリング例について

カウンセラーはAさんとこうした考えについて話し合い、まずはAさん自身のこれまでの辛い経験を癒していく必要性を伝えました。Aさんはこれに同意し、カウンセリングでAさん自身の気持ちや経験について話すことで少しずつこれらの整理を進めていきました。

母(A)の経験と、娘(B)のそれとは異なるという気づきへ

すると、「私が勝手にBのことを心配して、心配から自分の見方や気持ちをBに押しつけてしまっていたように思う」「Bもいつの間にか成長してひとりの大人になっていた」「BにはBなりの考えや価値観があっても当然ということがわかってきた」と少しずつAさん自身とBさんの体験を分けて考えられるようになりました。また、AさんはBさんと話し合う中で、Bさん自身の考えや気持ちを冷静に受け止めて認めてあげられるようにもなり、親子関係も改善しました。

エピソード例の最後

「必要なときには家族としてBに協力するけど、楽しいことでも辛いことでも、BがBの人生としていろいろと経験して成長してくれたらと思う。」「Bの成長を見守りながら自分は自分の人生を夫と楽しく歩んでいきたい」とAさんは話して、カウンセリングを終結されました。

さいごに

親役割の転換が難しい場合、それは親子関係に様々な影響を与えます。そして親自身も『親』という縛り付けの元で、上手く子どもと関われなくなってしまっていることもあります。カウンセリングでは、相談者自身の背景にも注目しながら、こうした転換が難しくなる経緯を一緒に検討しながら、より良い親子関係が築けることをお手伝いします。

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監修者

カウンセリングルームここまり医師

カウンセリングルームここまりの精神科医師と公認心理師・臨床心理士による記事記載と投稿。

医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。

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