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2023.04.08
会食恐怖について『カウンセリングで相談してみませんか』
INDEX
会食恐怖症の症状は複雑
皆さん会食恐怖を御存じでしょうか?
会食恐怖とは、誰かと食事をしている時、自分が食べている様子を相手から見られることで、緊張や不安を強く感じてしまい自然な食事ができなくなってしまいます。
「口に入れた食事を自然に飲み込めない」
「焦りと動揺で食器を持っている手が震えてしまう」
「吐気や呼吸の不調など、身体の異変を感じる」
等の問題が生じてしまうことがあります。
これらの症状だけでも大変つらいものですが、会食恐怖では、「このような自分が相手から変に思われていないか」といった相手からの評価が更に気になり心配するようになり、余計に緊張で会食ができなくなってしまいます。
自分の動作に集中したり、意識が向けられるほどに行動に不自然さが出てしまう
このような緊張や不快な症状を、コントロールしようと余計に食事に対する緊張や、「こうすべき」「こうならないようにしなくては」と意気込むことで、かえって言動が不自然になり、周囲の目が気になるだけではなく、「こういう性格だから...」「こんなことくらいで...」「こんな相談したら相手はどう思うだろうか・・・」といった自己評価の低下やネガティブな思考にもつながってしまうのです。
会食恐怖は比較的若年者が多い
会食は人との交流に大きな支障をきたしやすい
会食恐怖症は社交不安症に分類されますが、社交不安症は就学や就業のタイミングでもある10代から発症することも多いと言われております。
会食恐怖症による緊張や苦悩の結果、会食場面を次第に避けるようになり、友人や恋人、更には学校や職場などの人間関係を築くことが難しくなってしまうことがあります。
また、仕事の選択にも影響を及ぼし、将来の社会的生活にも大きな制限を生じさせてしまう可能性もあるのです。
そしてその治療は、精神科や心療内科で処方されるお薬以外にも、カウンセリングや心理療法などの取り組みもあります。
会食恐怖症での『カウンセリング取り組みのエピソード例』
今回は、会食恐怖のカウンセリングエピソード例を記載してみました。
Aさんは20代の女子大生です。Aさんは厳格な両親のもとで育ち、幼い頃から食事は残さず食べるようにと教えられてきました。しかし、Aさんは食べることがゆっくりで完食するまでに時間がかかりました。母親から「まだ食べてるの?」「早く食べなさい」と言われることも多く、次第にAさんは食事の場面で緊張や焦りを経験することが多くなりました。
食事を見られることへの緊張感がさらに高まってしまう
学校生活の中では、給食やお弁当がなかなか食べ終えられず、そのことで周囲に注目を浴びてからかわれるなど辛い思いもしました。Aさんは少しでも早く食べようと努力しますが、そうするとかえって食べ物がのどを通らず、緊張から食器を持つ手が震えることも気になって、気分が悪くなってしまいました。Aさんは「こんな自分の姿を見て周りは笑っている」「変なやつと思われている」と恥ずかしく感じるようになりました。
食事に関連した、社会生活の制限が出てしまう
次第にAさんは周囲から離れて一人で食事をするようになり、このことが影響して食事以外の時間も友人やクラスメートと一緒にいることが難しくなってしまいました。その後、大学に進学したAさんですが、会食することの不安から親しい友人を作ることができず、夢であった小学校の先生になることも生徒と給食を食べる可能性を考えると怖くなって諦めるようになりました。
自分の性格の問題とみなしてしまうことも
こうした状況をなんとかしたいとAさん自身考えていましたが、「自分の性格だから簡単に変わるものではない」「相談してもおかしな人と思われる」と誰にも相談せず一人で抱え込んでいました。
TVなどで体験談に触れ、医療機関とカウンセリングルームへ
Aさんに転機が訪れたのは、たまたま見ていたインターネットで会食恐怖の言葉を目にしたときでした。そこにはAさんと同じように苦しい経験をしてきた人たちの体験談や解決までの道のりなどが紹介されていました。これを見たAさんは、「こうした問題で苦しんでいるのは自分だけではなかった」「自分も問題を解決できるかも」と希望を抱いたAさんは勇気を出して医療機関を受診することにしました。
医療機関では医師がAさんの話を丁寧に聞きながら、社交不安症や会食恐怖のこと、改善が可能であるという説明を行いました。そして、Aさんは問題の改善とこれまでのAさんの辛い経験の気持ちを整理することを目的にカウンセリングを勧められ相談してみることにしました。
『カウンセリング初期:自分の事を話すことも』、ネガティブな印象が強かった
はじめてのカウンセリングでAさんは大変緊張していました。そして、「いざ相談するとなると自分のことをどのように思われるかが心配で。」と語りました。カウンセラーはこうしたAさんの気持ちに寄り添いながら、Aさん自身のペースで話をすれば良いことを伝えました。
そして、Aさんの考えや気持ち、経験を否定することなく、これまでのAさんの努力や苦労を労うようにカウンセラーは関わりました。次第にAさんは自分の会食恐怖について詳細を話せるようになりました。カウンセラーもAさんのどのような話にも温かく傾聴していきました。
その中でAさんは、「こうした自分の体験を話しても人から否定的な評価を受けることはないのではないか」という思いを抱くようになり、少しずつカウンセリングの中で安心感を経験するようになりました。
『緊張』以外の、会食の側面をカウンセラーと探してみることも
次第にカウンセラーととともに対話を重ねることで、『会食』にも、食べ物を食べること以外の面があることに気が付くようになりました。そして、Aさんは自身の会食恐怖の改善についても少しずつカウンセリングでの相談を参考にして取り組んでいきました。
相談者が取り組んで見つけた事を大切にしながら、カウンセラーと共有できる
あるとき、Aさんは大学の講義で親しくなった友人から食事に誘われました。不安はありましたが、勇気を出して食事に出かけたAさんは食べることよりも友人の話を聞くことに意識を向けてみました。すると、友人との会話が思った以上に楽しくなり、食べることを気にしない時間があることに気づきました。
また、友人が食事を残しても「美味しかった」「満足した」と笑顔で話すのを見て、「無理しなくても良いんだ」「味わうことも大切なんだ」と思いました。この経験は、「早く食べなければ」「周りから変に見えないようにしなければ」と考えて食事をしていたAさんにとって大きな発見になりました。
その後、カウンセリングを続けながらAさんは少しずつ会食する機会を増やし、その中で人と一緒に楽しく時間を過ごすこと、誰かと一緒に美味しい食事を味わう経験を積み重ねていきました。このことで普段の対人関係の緊張も和らぎ、会食への不安も気にならなくなっていきました。カウンセリングでAさんは、
「これまで食事は自分にとって残さず早く食べるという義務だった」
「食べている自分が人にどう映るかしか意識していなかった」
「勇気を出して相談したことで自信になった」
「誰かと一緒に楽しく時間や空間を共有できる喜びを知った」
と話してくれました。その後、問題が落ち着いたことをAさんとカウンセラー双方が確認できたことでこのカウンセリングを終結することとなりました。
さいごに
私たちは時として他者との交流を煩わしく感じたり、自分自身を抑圧するものとして経験することもあります。しかし、そこには誰かと一緒に喜びを共有できる幸せもあることをAさんは教えてくれました。
会食恐怖の問題はこうした喜びの機会を奪うことにもなり早い段階での対処が重要となりますが、前述の通り、会食恐怖や社交不安症においては特に相談することへの抵抗や難しさを経験することが多いと思います。このブログを読まれた方が少しでも安心して治療や相談に進んでいただける一助になれば幸いです。
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監修者
カウンセリングルームここまり医師
医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。
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