家庭 子育て
2023.04.05
夫婦関係と役割期待『カウンセリングの取り組みについてご紹介』
INDEX
夫婦・パートナーとの関係はメンタルに大きく影響します
パートナーとの良好な関係はメンタルヘルスの維持や向上に重要な要因となります。実際にパートナーとの関係がうまくいかないことで、心や体に不調をきたすまでに苦しんでしまうことがあり、カウンセリングで相談する方も多くおられます。
「夫が家事や育児を手伝ってくれない。」
「妻が自分の仕事に理解がない。」
「辛いときに相手が話を親身になって聞いてくれず口論になる。」
「相手の考えを押しつけてきたり、行動を制限される。」
などその相談内容も多岐に亘ります。
夫婦問題のカウンセリング相談は非常に増えている
こうした夫婦関係の相談に対して、カウンセリングでは、ご夫婦のいずれかとカウンセリングを進める個別カウンセリングと、夫婦一緒にカウンセリングを進めるカップル・カウンセリングがあります。今回は前者の個別カウンセリングによる夫婦の問題改善について取り上げます。
『夫婦の個別カウンセリング』エピソード例を挙げながら紹介します
個別カウンセリングの場合、まずは相談に来られた方(以下、来談者)から夫婦の問題に関する詳細を丁寧にうかがいます。同時にカウンセラーは来談者のお気持ちの辛さが少しでも和らぐように共感的な姿勢でお話を聞いていきます。そして、今後、相手とどのように付き合っていくかについてカウンセラーと話し合っていきます。
『役割期待』に注目してご紹介いたします
夫婦の問題を引き起こす要因は様々で、問題の解決にあたっては個々のケースを詳細に検討しながら進める必要がありますが、今回はこうした夫婦問題の要因の一つである「役割期待」に焦点をあてたお話をしていきます。
『役割期待』夫婦間のイメージや認識のズレになることも
役割期待とは、心理学において、相手が特定の役割(例えば、夫・妻、父親・母親など)を担い、それに基づいて考え行動することを期待するというものです。例えば、「奥さんなんだから家の掃除や毎日の食事をちゃんと作って欲しい。」「父親なんだから子どもが言うことを聞かないときにちゃんと叱って欲しい。」などがその例です。
しかし、この役割についてのイメージや捉え方は個人によって異なるとも言われています。夫婦間でこうしたイメージや認識のズレがあることで、相手が自分の期待通りのことをしてくれないと不満が生じるなど夫婦の問題に発展することが考えられます。
夫婦に関するカウンセリングエピソードの一例
Aさん(夫)は、夫婦の中での家事と子育ての分担、Aさん(夫)の仕事について妻と意見が合わないと不満を述べていました。カウンセリングの中でAさん(夫)は「自分は仕事で稼いで家族を養わなければならない。」と話していました。実際、Aさん(夫)はメインとなる仕事以外に副業も行いほとんど休みなく働いていました。
また、「自分は仕事で忙しく家事や育児を手伝う余裕が無いのは妻にもわかっているだろうに、妻は仕事を減らして家事や子育てを手伝うことを要求してくる。」「妻は家事や子育てに専念すべきなのに、パートの仕事をするなど妻自身の負担を増やすことばかりしている。」とも話していました。
役割期待からくる夫婦間のズレもある
こうした発言の背景に、妻やAさん(夫)自身に対する何らかの役割期待があることが考えられ、カウンセラーとともにAさんの役割期待について検討することになりました。
Aさん(夫)はカウンセラーから、
<夫婦において夫はどのような役割を果たすべきと考えているか>
<妻に対してどのような役割を期待しているか>
<妻はどのような役割をAさん(夫)に期待していると思うか>
と尋ねられました。
夫の、妻への役割期待とは
これに対してAさん(夫)は、
「夫は休まず働いて家族を経済的に不自由にしてはならない。」
「妻は家庭を維持して子どもを大切に育て上げなければならない。」
「妻としての役割まで自分に担うように期待しているように思う。」
と話しました。
『知らないうちに』お互いの役割を期待してしまっている
Aさん(夫)は、妻や自分自身に対して、こうした役割を期待していることに自覚が無かったと驚いておられました。実際、心理学においても役割の認識やそれに基づく期待は個人に自覚されにくいことが知られています。
お互いの期待の差異を知るきっかけに
Aさん(夫)は、こうして気づいた役割期待をお家で妻と話してみることを決めました。すると妻からは、
《父親と子どもの関わりが薄く子どもが寂しがっている。》
《『仕事ばかりで冷たいお父さん』と子どもが父親を嫌うのではないかと不安だった。》
《自分も仕事をすれば夫の仕事での負担を減らせると思ってパートを始めた。》
《夫に家事をしてもらうのではなく、夫を含めた家族みんなで料理をするなど家族の時間が欲しかった。》
などと言われたことを話してくれました。
パートナーのこれまでの言動の理解につながることも
そして、Aさん(夫)は
「自分の役割に対するイメージや認識によって妻の言葉の意味を歪めて捉えていた。」
「自分の役割期待に気づいたことで、初めて妻が話していたことの本当の意味と妻自身の気持ちを理解できた。」
と話し妻との関係が改善に向かいました。
さいごに
このように役割期待は無自覚のうちに夫婦の問題に影響を与えている可能性があります。夫婦の問題が少しでも良い方向に向かうために、まずは自分の役割期待について、カウンセリングの中で検討してみてはいかがでしょうか。
そしてそのカウンセリングでの検討から、パートナー相手と改めて向き合い、相手の考えを知るきっかけになるのではないでしょうか?
カテゴリ:
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監修者
カウンセリングルームここまり医師
医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。
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