対人距離『パーソナルゾーン』とは

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2023.04.03

対人距離『パーソナルゾーン』とは

対人距離の適切さは大事

コロナにおけるソーシャルディスタンス

昨今の感染症の世界的な流行によって「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」という言葉が広く一般的に使われるようになりました。もともとは「social distancing」という公衆衛生戦略を表す用語で、疾病の感染拡大を防ぐため、意図的に人と人との物理的距離を保つことを意味する言葉が由来となっています。

コミュニケーションにおけるソーシャルディスタンスとは

このソーシャルディスタンスはウィルスなどが人から人に感染しないために必要な距離のことです。では、感染症対策をとる必要がなければ人は他者といつも密にくっついているのか……といえばそうではないはずです。相手との関係性にもよりますが、適度に距離を取っていることのほうが多いはずです。

パーソナルスペースを知ろう

もともと人間にはパーソナルスペースというものがあり、人とは適度に距離を取りたいという気持ちが備わっているのです。人には自分にとって快適な対人距離、快適なパーソナルスペースがあり、その範囲内は自分の空間だと考えているのです。

パーソナルスペースに、他人が踏み込むことへの抵抗感とは

例えば、ガラガラの電車内で一人お客さんが座っていたとします。その時、先に座っているお客さんの隣に座る人はどのくらいいるでしょうか?

多くの人は離れた席に座るのではないでしょうか。ある実験では一番離れた対角線上の席に座る人が一番多いという結果も出ているくらいです。もしわざと隣に座ったとしたら、しばらくすると先に座っていたお客さんは多くの場合席を立つでしょう。

つまり、パーソナルスペースに他者が存在するということはかなりの抵抗感が生じるものなのです。

パーソナルスペースの種類とは

親密ゾーン

自身の体の半径50cmほど。恋人や家族などごく親しい人、心から受け入れている人だけに許すゾーン。

対人的ゾーン

半径50cm~1mほど。友人や仲間など親しい人と触れ合う距離。

社会的ゾーン

半径1m~3mほど。初対面やビジネスなどフォーマルな人間関係に用いるゾーン。

公的ゾーン

半径3m以上。相手との個人的な関係が成立しない距離。

人との距離の不快感の出安さの目安にも

知らない人が「親密ゾーン」に入ってくると人は非常に不快感を抱きます。先ほどの例で、先に座っていたお客さんが席を立つ可能性が高いのもこのゾーンが人それぞれあるからといえます。また、満員電車が不快に感じるのもこのためです。

対人距離とコミュニケーション

人と人との距離感は対人関係を構築する中で非常に大切なものです。人は人間関係を構築していく段階で、相手と自分が不快にならない距離を測って保つようにします。しかし、中にはその距離感をうまく測れず人間関係の構築が難しくなってしまう人がいます。コミュニケーションの苦手な方の中にはこのように対人距離を適切に把握することができずに困っているという方もおられます。

カウンセリングの場でもたどり着く問題でもある

カウンセリングでは対人距離が遠すぎる人にも近すぎる人にも両方のタイプに出会うことがあります。「対人距離をうまく取れない」と相談に来る方は少ないですが、人間関係の話の中でこのような問題点に行き着くことは多々あります。いろいろな話をしていく中で、この問題点に出会った時には、一緒に対人距離の取り方、測り方について考えることがあります。相手との関係性、相手の性格、自分はどういう関係性を築いていきたいと思っているのか、これまでの相手の反応・・・・さまざまな角度から質問をし、相手と患者さん自身との今までの関係性と今後良好な関係を築いていくために必要なことを整理します。そして「距離感」というあいまいな表現ではわかりづらい部分を具体的に「○○cmくらい」と表現することもあります。

対人距離だけではなく、頻度も大切

また具体的な距離だけではなく連絡の頻度や話しかけるタイミングなども相手との距離感や関係性を良好に維持するためにとても大切なポイントになります。そのため、これまでの問題点と今後の課題を整理したうえで、直接的なかかわりだけではなくメールや電話などの間接的なかかわり方についても「ちょうどいい距離感」を探っていきます。

さいごに

今回は対人距離『パーソナルゾーン』について紹介をいたしました。

『パーソナルゾーン』とは相手との関係によって大きく異なります。一概にこういう対応をすべきというルールではなく、関係性や目指す親密度に応じた対応が必要となります。そして、ときに人間関係で悩んだ場面こそ、主観的な関係性の見立てだけではなく、客観的な視点も取り入れた見直しも大切です。

カウンセリングの中では、ご本人のこれまでの行動などを振り返ることでよかったところと気づいていない問題点についても整理し、より患者さんがより良い人間関係を築き、人間関係で負担を感じることが少なくなるようなお手伝いをしていきます。

参考文献

『人間関係の心理学 第二版』 斎藤勇 著

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監修者

カウンセリングルームここまり医師

カウンセリングルームここまりの精神科医師と公認心理師・臨床心理士による記事記載と投稿。

医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。

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