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2023.04.03
人の目を気にしすぎてしまう『なぜ自己評価が下がってしまうのか』
INDEX
人の目を気にしすぎてしまう人の傾向とは
空気を読むことや、人からの評価を重視するよう求められる時代に
カウンセリングの場で「人の目を気にしてしまう」「人から自分がどう思われているのかが不安で仕方がない」など悩まれる方は非常に多くいらっしゃいます。
特に最近は「空気を読む」ことが当たり前で「空気を読めない」人は疎まれる傾向があります。そのため、常に人からの評価を気にして社会から受け入れられる人間であることが求められることが多い時代のように思います。
グループや集団で生活していく上で重要な事とは
当然、多かれ少なかれ人は誰かと関わらなければ生きていくことはできません。家族、同僚、先輩、後輩、はたまたスーパーやコンビニのレジの人、電車で隣り合わせになった人・・・・など関わり合いの程度や深さに差はあれど誰かと関わることで私たちの生活は成り立っていると言うこともできるのではないでしょうか。いくら一人で生きていく、と決めている人であっても全く人と関わらないで生活していくことは不可能に近いでしょう。
『集団』の調和をより重要視されている
特に日本人は昔から「個人」よりも「集団」の調和を大事にするところがあり、調和を乱す人は村八分と言われるように、いわゆる地域の中で仲間はずれにされさらに孤立させられていく・・・・という風潮もありました。
今はこの村八分という風習が残っている地域こそ少ないですが、学校などのクラスでは少しでも目立った言動があれば目をつけられ良くない噂を流されるというような集団の中で孤立するきっかけを作ってしまうことは往々にしてあります。社会に出てからは特に上司から求められていることを推測して行動したり「忖度」できたりする人が評価される、ということもあります。
しかしながら『個性』を主張する事への抵抗感はまだ大きい
欧米の文化や考え方が多く日本にも入ってきて一時期は「個性」を大事にするという流れも出てきたところはありますが、根本にある「人と違うことへの不安」はなかなか払拭されていないようにも思います。人それぞれ容姿も考え方も違うということは当然のごとく認識していながらも、心の部分ではどこかそれを受け入れきれていない、どこのだれでもない「みんな」と違うことに大なり小なりの不安を抱いている人は少なくないようです。
度合いを超えて『気にしずぎ』にも注意
ある程度、自分が人からどう見られているか、どのように評価されているかということを気にすることは重要なことです。ですが、その「ある程度」の度を超えて「気にしすぎてしまう」と日常生活、社会生活が非常に送りづらいものとなってしまいます。
『自己意識』には「私的自己意識」「公的自己意識」がある
ほとんどの人たちがもっている自分自身についての意識を心理学の用語で「自己意識」といい、その自己意識は「私的自己意識」と「公的自己意識」に分けることができます。私的自己意識とは自分の考えや性格についての意識、公的自己意識とは自分の容姿や服装、動作についての意識のことをいいます。この自己意識があるから人は時や場所にふさわしい服装や髪型、メイクなどを整え適応的な対応をすることができます。
周りの視線を気にしやすいことは、評価や理想とのギャップに晒されやすい
ある実験では公的自己意識を高めるために目の前に鏡を置いたり他者に見つめさせたりさせると、自分に注意が向き公的自己意識が高くなるという結果が出ています。つまり人の目が気になり人からの評価に不安になっている人は、この公的自己意識がいつも高い状態になっていると言えます。そして、この実験から「自己に注意が向かうと現実の自己と理想の自己の食い違いが強く意識されるため、自己評価が低下し、不快な感情が生み出される」ということが明らかになっています。言い換えれば、周りの視線を気にしやすい人は多くの場面で理想と現実のギャップに晒されることになりいつの間にか自己評価が低下している、ということになっているのです。
知らないうちに自己評価が下がってしまうことも…
そこからはどんどん悪循環にはまり、自己評価が低いから自分のできてないことが余計に気になるようになり、そうすると周りからの評価も下がっていくことが不安になりさらに人の目が気になり・・・・その不安にさいなまれ振り回されてしまいどんどんパフォーマンスが下がっていくことが予想されます。
カウンセリングでの対応について
カウンセリングの対話があると、冷静な判断ができるきっかけにも
カウンセリングでこういった相談を受ける場合はまず人の目が気になる理由、場面や状況を詳細に聴取します。最初にそこを確認しておくとその人が気にしやすいパターンが見えてくることがあります。いつの間にか始まっている悪循環を少しずつ客観視できるようになることを目指します。
自分が思う『他者からの自分の見え方』にはギャップがないかどうか
その次の段階で「実際はあなたの周りの人はあなたのことをどう思っていると思う?」などと質問をし、自分が思い込んでいる他者からの評価と「実際に」見聞きしたことのある他者からの評価(フィードバックされた言葉やリアクションなど)を確認し、「思い込み」の部分と「現実」の出来事とのすり合わせを行います。
そうすることで「実際はできていないわけではない」「集団の調和を乱しているわけではない」「悪い評価を得ているわけではない」のに不安になってしまっている自分に気が付くことが多くあります。
本当に必要な部分の整理と作戦会議にもつながる
時に、本当に何か失敗したりできていないことがあって他者から厳しい評価を受けていることもあります。その場合はその「できていないこと」や「失敗」をこれからどうやって取り戻していくか、どういう行動をとることで実際の評価を上げていける可能性があるのか、ということを検討するなどカウンセリングの中で作戦会議のようなことをすることもあります。
人の目を気にしすぎてしまっているルーツを探ることも大切に
そして最終段階として、なぜ必要以上に人の目を気にしてしまうようになったのか、そのルーツを探ることもあります。時には過去のトラウマティックな体験がベースになっていることがあり、その傷つきが十分に癒えていないことによって「またあの時のようになったらどうしよう・・・・」と起きてもいないことに不安になっている場合もあります。
親に厳しく育てられて褒められることがなかった、子どもの頃に自分が気づかないところで集団の和を乱していたことを後々知った、仲間はずれやいじめなどの経験がある・・・・など理由は様々ですが、過去の経験から抜け出せずにいる方も多いです。
丁寧に過去を振り返ることは自分の傾向を知るきかっけにも
丁寧に過去を振り返り心の中を整理していくことで、何が心のしこりになっていたのか、何が自分を行き辛くさせていたのかということに気づくことで自分が敏感になりやすい状況を察知し「自分はこういう場面が苦手なんだ」とわかることができます。自分が苦手な状況や不安になりやすい事柄をわかっている場合と、よくわからないままに不安になって振り回されている、では同じ状況に出くわしたとしてもその後が全然違うという印象があります。
傾向を知ることは、自分を冷静にモニタリングできるようになる
わかっている場合には自分の心の揺れをきちんとモニタリングでき、「気にしすぎている」「考えすぎている」ことを意識することができます。意識することで自分と少し距離を取って認識し、先述したように「自分が思い込んでいる他者からの評価」と「実際の他者からの評価」を分けて考えることができます。
しかし、わからないままに不安に振り回されてしまっている場合は自分の考えと現実の区別が曖昧になり、さらに不安が膨らんで悪循環に陥っていく・・・・・ということが予想されます。つまり、自分を意識する事はとても大切でもあります
さいごに
今回は、人の目を気にしすぎるという傾向について、カウンセリングの視点から記載をしました。よくカウンセリングの初期に「対処方法を教えてください」「どうしたらいいのでしょうか」などと質問をいただくことがあります。確かに対処方法を知っておくことは大切ですし、それがあることで安心できることも多いです。
ですが、それよりも先に一度立ち止まって自分の心の動きを見つめなおし、自分自身で理解を深めておくということも非常に重要で、それがあるからこそ、その後自分に合った対処方法や対応を考えることができるのではないかと思います。また、実のところは対処方法は気づかないうちに患者さん自身が実践していることがあります。
不安になったときのことを詳細に聞いていく中で「そういう時はどうしていますか?」「今まで取った対処方法で何か良かったことはありましたか?」などと質問すると意外と、知らずのうちに多くの方はなんらかの工夫をしていることもあるものです。悩み事への対処方法は何か特別なことをするのが良いわけではなく、日常生活の中に自然と取り入れられているということも少なくないのかもしれません。
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監修者
カウンセリングルームここまり医師
医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。
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