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2023.04.01
SNSの普及と人間関係『SNSでは見せられない、実生活とのギャップ』とは
SNSの普及と歴史
ソーシャルネットワークサービス(以下、SNS)は広く一般的に使われるようになり、中高生以降の年代では一度も触れたことがないという人は珍しいほどの時代になっています。SNSの始まりについてはさまざまな議論があり、定説はないようですが、2002年開発のFriendsterが現在、我々の慣れ親しんでいるSNSのスタイルを最初に取り入れたものだと言われています。
その後日本では2004年頃からmixiが広まりはじめ多くの人の目に触れるようになり、Twitter、InstagramなどさまざまなSNSが普及しSNSのアカウントを複数所有していること自体が決して珍しいことではなくなってきました。
「友だち」を作ることの気楽さ
直接の知り合い、友人から全く見ず知らずの人まで幅広く人と交流できるSNSは、気軽に「友だち」を作ることができます。現実世界の中で同じ趣味嗜好をもつ者同士がつながり仲良くなる、ということは普通のことですが、SNSの世界でも同様です。SNSで知り合った者同士が「オフ会」を開いたりイベントを開催したりして、そこで知り合った人同士がさらに人間関係が広めていくということも少なくありません。
一昔前はインターネット上で人と知り合うことに不信感を抱く人はかなり多かったと思いますが、現在ではインターネット上で見知らぬ人と出会って仲良くなるということに抵抗を感じる人が減っており、人と知り合う場としてSNSはかなり垣根が下がっている印象を受けます。
SNSにハマる理由
まず一つ目に言えることは手軽さではないかと思います。基本的にはスマートフォン(以下スマホ)やパソコンがあればSNSを始めることに対しての費用は必要がないものが多く手軽に始めることができます。また、中学生や高校生も一人一台スマホを所有することが一般的となっていて生活の一部にインターネットがありいつでもSNSを始められる環境にある、ということも理由の一つと言えるのではないかと思われます。中学校や高校は入学前からSNSに入学予定の学校を載せることで、事前に知り合いつながりができており入学式の時点ですでに「お友達」になっていることもあるようです。
「いいね」機能や、コメント・フォロワー
またSNSでは自身がアップした記事に「いいね」やコメントが付くことによって、自分が認められている、褒められている、と感じることができます。いわゆる「承認欲求」をそこで満たすことができるのです。これもSNSにはまる理由の一つと言えるでしょう。多くの人が認められたい、褒められたいという気持ちがありながらも現実世界の日常生活の中では十分に満たされていない可能性が考えらえます。もしかするとSNSが普及したことによって人間が潜在的にもっていたけれども自覚されていなかった承認欲求が刺激された部分もあるかもしれません。
数値で測れる自分の関係
いずれにしても現実世界よりも視覚的にも数値としてもわかりやすく承認されるので、心も満たされやすいということが予想されます。また、「いいね」やコメントは当事者同士だけではなく記事を閲覧した不特定多数の他者にも見せることもできるため、より多くの人に承認されていく、もしくは承認されているということが知られていきます。これもまた承認欲求が満たされていくことにつながると考えられます。
『加工』や『演出』、『切り取り』が可能
そして、SNSの世界は多少の「加工」や「演出」が可能です。「インスタ映え」という言葉が一時期多用されたことがあったように、写真写りが良くなるように自分の顔や食べ物や飲み物、景色などありとあらゆるものに対して撮影の仕方を工夫し、アプリなどを使って加工します。
また、幸せそうな楽しそうな瞬間だけを切り取ってSNSにアップすることによって、順風満帆な自分を演出することができます。SNSの中では現実生活のドロドロした人間関係やストレスなどは排除され「美しく」「綺麗な」「キラキラした」瞬間だけを載せることができるのです。このようにして金銭的な負担もなく、身近にあるものでお手軽に始められ、より良い瞬間だけを披露し多くの人に承認されていく・・・・・承認されればさらに多くの人に承認されたくなる・・・・・という循環が生まれていきます。
SNSにまつわるストレスと心理療法
SNSで人間関係が広まり、良い部分だけを人に見せ、承認されていく・・・・ここだけを見ればSNSは非常に良いものでストレスとはあまり関係ないようにも思えます。しかし、SNSの背景には普段と変わらない日常生活があり、生身の人間が存在します。普段と変わらない人間関係を送る生身の人間はSNSにはアップされないドロドロした部分を現実世界で引き受けなければなりません。
SNSでは見せられない、実生活とのギャップが大きくなっていく
また、他者のプライベートを気軽に知ることができるようになり、それによって自分の現実生活とのギャップに落ち込むことも多いようです。特にカウンセリングで出会う方は他者の目や評価を非常によく気にする方が多いです。「あの人はあんなに楽しそうにしているのに自分は・・・・」など誰かと比べて落ち込んだり、自分の知らないところで友人が楽しそうにしている様子を見つけて落ち込んだりすることもあります。
他者とのとの比較や、数字や見栄えが気になってしまう
自分が投稿した記事に対して何件の「いいね」とコメントが付くのかということを気にして、他の人と比べて疲弊してしまう人もいます。SNSの中で一対一でやり取りをしているときは趣味など共通の話題で盛り上がることができていても、オフ会やイベントなど現実で多人数で会ったときに、もともと人間関係が不得手な人はうまくSNSの世界から現実世界の人間関係に移行することができず大きなストレスを抱えることになります。
心理療法やカウンセリングで注目するポイントとは
カウンセリングではSNSには表現されないリアルな人間の思考や感情を扱います。カウンセリングで出会う人の中にSNSと現実のギャップや他者のSNSと自分の現実の比較で悩む人は近年多くなっている印象を受けます。少し考えればSNSの背景にはリアルな人間がいて日常生活が送られているということはわかるはずです。しかし、悩んで精神的に不調をきたしている人の中にはそういった当たり前のことを忘れてしまっている(気づけなくなってしまっている)人もいます。
他者との比較ではなく、あなたの増大してしまっている不安や悩みについて注目する
SNSの背景には、リアルな人間がいて、日常生活があるということは、わかっているけど心が追い付かない、という方も多々おられます。まずは、それほどに増大してしまっている不安や悩みを十分に共有し、SNSにアップされているような綺麗な場面ばかりではない日常生活に生きているということについて時間をかけて確認しあい、どうやって折り合いをつけていくかということを一緒に探っていきます。
そして、SNSとの付き合い方や距離の取り方、現実の不安や感情、そこから受けるストレスなどとの付き合い方について検討し、その人に合った適応の仕方を見つけていくことを目指します。
さいごに
SNSは人との繋がりを身近にするだけではなく、お互いの事をもっと分かりやすくするきっかけにもなる便利なツールだと思います。しかしその一方で、切り取られ・誇張された面もあるという点には注意が必要です。知らないうちに数字にとらわれ、いいねを含んだ承認欲求が大きくなるだけはなく、美化されたSNSの姿と自分の現実を比較して悲観してしまうことも少なくありません。
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監修者
カウンセリングルームここまり医師
医師としてのメンタル診療やメンタルヘルスに関する視点だけではなく、様々な人たちの日々の悩みなどにも注目して記事の記載や監修を行っています。カウンセリングルームここまりは臨床心理士と公認心理師の所属する名古屋市の金山と名古屋駅のカウンセリングルームです。
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